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地産地消の取り組み事例から見る生産者と消費者のメリット・デメリット

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地域おこしが盛んになりつつある現在、地域へ目を向ける動きは食の分野でも確実に広がっています。そのうちの一つが地産地消です。今回は、地産地消の意味や取り組みの詳細について分かりやすくご紹介します。

地産地消とは

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「地産地消」とは、その土地で作ったものをその土地に暮らす人々で消費することを意味します。地域で生産されるものの中でも特に【食】について使われ、農業や漁業と大きく関わる言葉です。地域の特性を活かした食生活の定着や人々の健康増進、生産者の権利・利益確保を目的としています。また、伝統的な食文化を守るためにも重要な役割を果たすのが地産地消です。

ほんの一昔前までは地産地消が主流でした。地域で栽培・育成したものや獲ったものの多くを、その地域内で売り買いしていたものです。しかし、交通の発展や技術の向上、各国との交易活性化に伴って、地元の食材を口にする機会がめっきり減ってしまいました。

さまざまな地域の食材が手に入るようになったことで良い面もありましたが、生産者と消費者の繋がりが弱くなったり、伝統的な食文化が薄れていったりなど、負の面が存在するのもまた事実。そのため、農林水産省は1980年代から地産地消への取り組みを始めました。農林水産省、つまりは国が力を入れて推奨していることもあり、近年は学校や企業、農家などのさまざまな立場から多様な取り組みがされています。

たとえば、直売所での食材販売や地元の食材を使うレストランなどです。学校では、地域で生産された食材が給食に使われる他、地元の食材や生産者を知るための食育なども行われています。

また、地産地消は生産・加工・提供を一元化する6次産業化にも繋がるため、注目度の高い取り組みであることは間違いありません。その他、日本の大きな課題である食料自給率の向上にも関係しています。フードマイレージや仮想水といった考え方も重視されてきているため、今後はますます地産地消の重要度が増していくでしょう。

※フードマイレージとは、食品・食材がどれだけ遠くから運ばれてきているのかを示す指標。「重さ×距離」で表す。
※仮想水とは、輸入している食品・食材を自国で生産すると仮定した時に必要な水の量。バーチャルウォーターとも言う。

地産地消のメリット

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地産地消がどのようなものか整理できたところで、地産地消がもたらすメリットについて見ていきましょう。生産者と消費者両方の立場のメリットを分かりやすくご紹介します。

新鮮な食材が手に入る

今は交通も発達し、急速冷凍などの技術も発展していますが、やはり他の地域や国から運ばれる食材は鮮度が落ちやすいです。しかし、地域で採れた(獲れた)ものをその地域で売るということであれば、運送によるタイムロスがないので鮮度は抜群。新鮮な食材は味も栄養も良いですし、安全性という面から見ても信頼できます。鮮度の高さは地産地消による最大のメリットと言っても過言ではありません。

生産者と消費者の距離が近い

地産地消の代表例として直売所での販売が挙げられます。このような場では、実際に野菜を作っている農家の方々などが販売まで行っているため、生産者と消費者との関わりが必然的に増えます。

消費者にとっては生産者の顔が見えることで安心感を抱きやすいでしょう。一方、生産者の立場から見ると消費者の声が直接聞けるというのは大きなメリットです。消費者とのやり取りの中で生まれるアイデアもあるでしょうし、仕事のやりがいにも繋がります。

SDGsに貢献できる

SDGs

「持続可能な開発目標」、通称SDGs(エスディージーズ)については、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。100年先、200年先……とこれから先も持続していける世界を目指して掲げられた17の目標がSDGsです。日本を始め、世界の国々がSDGs達成に向けた活動に取り組んでいます。地産地消は、SDGsの達成に大きく貢献できる取り組みであり、関連性のある目標は17個中なんと12個!

他のメリットとも関係してきますが、地産地消に取り組むことで環境問題や食糧・貧困問題などの解決にも繋がるのです。世界の人々が、私たちの子どもが幸せに暮らせる未来のために、もっと地域の食へ目を向けてみませんか?

コスト削減・利益拡大

遠い街のスーパーなどに出荷する場合、基本的には適正サイズ・形状のものしか市場に出せません。また、梱包や運送にかかるコストもかなり大きいです。

しかし、直売などの販売手段を取る場合は規制が厳しくないため、多少形が悪かったり、サイズが不揃いだったりしても問題ありません。作ったものが無駄になりにくいのでコスト削減になります。また、場合によっては梱包を簡易的なもので済ませることも可能でしょう。運送コストも抑えられます。

地産地消のメリットはそれだけではありません。卸先を経由する必要がないため、販売時の利益率が高くなるのです。あまりにも生産量が多いと地域内で消費しきるのは難しいかもしれませんが、可能な範囲だけでも地産地消に取り組むことで生産者の収入拡大も見込めます。

地球温暖化対策に繋がる

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先ほど少し触れたフードマイレージという考え方。これは、運んだ食材の重さと距離を乗じたもので、二酸化炭素排出量と相関関係にあります。フードマイレージが大きいほど、二酸化炭素の排出も多いのです。

農林水産省のデータによると、日本は先進国の中でも断トツでワースト1位を記録しており、食料輸入に伴う二酸化炭素排出量は年間1,690万tにまで上ります!1人あたりに換算すると年間約130kgの二酸化炭素を排出している計算です。とはいえ、この数字だけではどの程度のものなのかイメージしづらいでしょう。日常生活で130kgの二酸化炭素を節約(省エネ)するとしたら、以下の時間が必要になります。

夏の冷房温度を27℃から28℃に:12年分
夏の冷房時間を1時間短縮:19年分
毎日1時間テレビを見る時間を短縮:11年分
毎日1分間シャワーを短縮:5年分

引用:農林水産省「フードマイレージについて」

この数字から、他地域(国)の食材を食べることでいかに膨大な二酸化炭素を排出しているかが分かるでしょう。地産地消に取り組むことで、輸送に必要な燃料の節約や二酸化炭素排出量の削減に繋がるため、環境保護にも役立ちます。

地産地消のデメリット

さまざまなメリットがあり、良いことづくめのように見える地産地消ですが、良い面もあれば悪い面もあるのが世の常です。続いて地産地消のデメリットについて見ていきましょう。

地産地消が難しい地域もある

地産地消は日本全国どこでも可能かと言われるとそうではないでしょう。たとえば東京などの大都市では生産できる土地が少ないにも関わらず、消費者の数は非常に多いです。どうしても外の地域に頼らざるを得ません。また、北海道などの気候条件が厳しい地域の場合、季節によっては生産がままならず地産地消ができないこともあるでしょう。

これらの極端な例を除いても、地産地消の地域差は多かれ少なかれ生じてしまいます。生産できるものが豊富にある地域は地産地消に取り組みやすいですが、そうでない地域もあるのが現状です。

生産者側の人材不足

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地産地消をするためには生産者側の努力が必要不可欠です。市場に卸すのであれば生産・出荷までの作業のみで良かったところが、地域内で生産と消費を完結させるとなると販売や品質管理、宣伝なども行わなければいけません。

普段と異なる業務が必要になるということは、それらの業務を行えるだけの能力を持つ人材を確保しなければならないということです。しかし、農業や漁業などの第1次産業に携わる人は年々減少傾向にあり、高齢化も著しいことから人材不足は深刻な問題となっています。ただでさえ人手が足りていない業界のため、生産活動以外の業務も行う余裕を作るのは困難でしょう。地産地消に取り組むためには、周囲のサポートが必須です。

安定させるのが難しい

今、地域外への出荷が主流となっているのは、大きな市場へ卸してニーズの高い場所で販売することによって、安定した出荷や販売ができるからです。地産地消が活発になるのは良い面もありますが、それによって地域で手に入れられる食材に偏りが出てしまうかもしれません。また、生産物や生産量の調整も必要になるでしょう。学校給食などの大量消費が期待できるところへ卸すとしても、種類の少なさや量の不安定さ、形状の不揃いなどの問題があり、安定した供給はなかなか難しい課題です。

加えて、地産地消の場合は地域の小規模生産者の協力も欠かせません。しかし、小規模だと生産にかかるコストが大きくなりやすいので、市場を通さない場合でも販売価格が高くなってしまう可能性があります。

このように、販路や供給、価格が安定しづらいというのは、地産地消に取り組むうえで無視できない大きな問題です。

地産地消のこれから

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地産地消にはメリットだけでなくデメリットもあることから、限定的な取り組みに留まっているのが現状です。しかし、デメリットとなっている問題さえ解決できれば、今まで以上に地産地消を活発化させることができるでしょう。そのため、国は地産地消を推進する政策を掲げ、一定額の予算を確保したうえでデメリットの解消と地産地消の促進を進めています。

たとえば、「食料産業・6次産業化交付金」「消費者・食農連携深化対策事業のうち地域の食の絆強化推進運動事業補助金」などを設け、地産地消を経済的に支援しています。また、学校給食や社員食堂、高齢者施設の食事に地域の食材を使うための手助けをする「地産地消コーディネーター派遣事業」や、地産地消への取り組みを表彰する「地産地消等有料活動表彰」「地産地消休職当メニューコンテスト」なども行っており、さまざまな面から地産地消を推進中です。

こういった国の政策を上手く活用することによって、地産地消に取り組みやすくなるでしょう。全国に地産地消が広がり、地元で作られたもの・獲れたものを口にするのが当たり前になる日はそう遠くはないかもしれません。

参考:農林水産省「地産地消・国産農林水産物の消費拡大」

地産地消のためにえいようJoinができること

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食を通じて人々の健康を支えたり、地域の食文化の保全・発展をサポートしたりするのは管理栄養士の大切な仕事の一つです。管理栄養士の持つ専門的なノウハウは、必ずや地産地消にも役立てられるでしょう。

えいようJoinには全国各地の管理栄養士が登録しており、地産地消への取り組みを効果的に支援することができます。これまでにも特産品の栄養解説や地域の飲食店のブランディングなどに携わってきました。その他、地域の食材を使ったレシピ・商品開発や、社員食堂の献立作り、食育セミナーなど、さまざまな分野でのサポートが可能です。

無料相談・見積もりも受け付けているので、ご興味のある方はどうぞお気軽にお問い合わせください。

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